タントラについて 2016年4月

2016年04月14日

タントラとヨガの関係性は、一般的にはそれほど認識されていません。日本では、真言宗を始めとする密教文化がありますが、これとタントラと結びつけて捉えられることは一般的には多くありません。また、タントラヨガという言葉も存在しますが、その内容もそれほど認知されていません。西洋においては、フェミニズムの動きから派生して、タントラがセクシュアルヒーリングとして使用されてしまったため、本来の価値が隠されてしまっています。

タントラとは、ヴェーダの真髄を別の形で体系化した哲学/形而上学で、崇拝する神によって分類されます。私が学んできたタントラは、’シャイヴィズム’と呼ばれるものでシバを絶対的存在として成り立っています。このシャイヴィズムの中でもヨガアーサナ等を実践的に取り込んでいる流派は、「カウラ」と称され、時にこのヨガは「カウラヨガ」とも言われます。

この哲学は、この世の摂理;人間そして全ての根源の意味を示し、どのように自分らしく、自分のdharma/自分らしさに沿って生きて行くかという人間性を、実践的に提示するものです。

古代の聖典ヴェーダの真髄を綴ったタントラは、人間性の意義を教示しています。過去数世紀、私達は自分以外全ての対象からの離脱や自己内での心と体の分離という意識を刻み続けてきました。このように「自己」と「他」を分離する傾向は、様々な社会的摩擦や心理問題を作り上げています。タントラは、この概念を捨てることを提唱します。全てのものの中に必要性と価値を見いだすことで、不安、怒り、嫌悪、差別など心の混乱が消え、自由という感覚のもとで人間の質が向上します。そして、人間関係や社会に価値ある実体性を与えます。伝統的でありながら時代を超越したこの教えは、現代の私達の精神的成長に大いに役立つと考えます。不必要な既成概念や誤った情報に流されることなく、真実を見据えて自分らしく生きるヒントがここにあります。

生きるのはたった一度のみ。タントラが教えることは、人間の存在の価値を愛でることです。人間関係、社会、そして人間性に価値ある実体を与えてくれるものです。

タントラに限らず、いわゆる宗教と名付けられる精神的な教えは、正しい方向から観察すれば、それらはすべて人間性の高揚を語っていることが明らかです。神や仏がどうこうという勉強は、仙人のような生活を招くというイメージもなきにしもあらずですが、正確に学ぶことにより、実際はこのイメージとは全く逆な方向に導いてくれます;人間として人と心から交流して、毎日深く生きてゆくことです。

日常生活で美味しい食事をとること、家族と過ごすこと、友人とショッピングに出かけること、音楽を楽しむこと、おもしろい映画を見ることなど、生活のすべての場面においてどのように幸せに深く大きく生きて行くかという基本が、タントラなどの人間哲学に隠されています。